平成31年度の税制改正のポイント(不動産投資関連)

目次

平成31年度の税制改正のポイント

昨年12月に平成31年度の税制改正大綱が発表されました。

今年は10月に消費税が10%にアップされる予定ですが、今回の税制改正は、消費税率引上げに伴う景気悪化の対策としての改正項目が目立ちます。

例えば、住宅ローン控除の控除期間が10年からさらに3年延長される特例が新設されること等です。

また、相続税法における小規模宅地等の特例の見直し、個人事業用資産の納税猶予制度の創設、民法改正に対応した税制の整備など、今後の資産対策に大きな影響を及ぼす改正も予定されています。

大切な資産を守り、活かしていくためには、新たな税制を知り、その改正に的確に対応していくことが必要です。

今回の改正項目は、まだ正式には国会で成立していませんが、通常ですと今年3月には国会で成立しますので、今回の改正項目のうち、不動産投資等に関連がある項目を中心に見ていきたいと思います。

 

<不動産投資等に関連する改正項目>

消費税の増税と住宅税制
・住宅ローン控除〜控除期間を3年間延長する特例の新設
・消費税率10%への引上げ時の住宅にかかる経過措置

事業用土地にかかる相続税法の見直し等
・小規模宅地等の特例の見直し
・個人の事業用資産にかかる相続税等の納税猶予制度の創設
・土地登記の軽減税率や空き家譲渡の特例の延長
民法改正と相続税法改正
・新設された「配偶者居住権」の相続税評価額

 

消費税の増税と住宅税制

住宅ローン控除〜控除期間を3年間延長する特例の新設〜

住宅ローン控除とは、正式には「住宅借入金等特別控除」といい、個人が住宅ローンを利用して住宅を取得等した場合で、一定の要件を満たすときに、年末の住宅ローン残高の1%相当額を所得税額から控除することができる制度です。

現行の控除期間は、居住開始年から10年間とされていますが、これを3年間延長する特例が新設されます。

尚、この特例は、消費税率が10%である住宅を取得等し、2019年10月1日から2020年12月31日までにその住宅の居住を開始することが必要となります。

改正後について一覧表にすると次のようになります(赤字部分が新設された特例です)。

区分 控除期間 年間控除額の計算方法 最大控除額(年間) 最大控除額(合計)
長期優良住宅 当初10年 ①住宅ローン年末残高(5,000 万円を限度)×1% 50万円 500万円
長期優良住宅(新設) 11年目~13年目 ②税抜の住宅取得等の額(5,000 万円を限度)×2%÷3
①又は②のいずれか少ない金額
約33万円 100万円
一般住宅 当初10年 ①’住宅ローン年末残高(4,000 万円を限度)×1% 40万円 400万円
一般住宅(新設) 11年目~13年目 ②’税抜の住宅取得等の額(4,000 万円を限度)×2%÷3
①’又は②’のいずれか少ない金額
約26万円 80万円

 

不動産投資物件には住宅ローン控除は適用できませんが、アパート併用住宅等の場合には居住用部分については住宅ローン控除が適用可能です。

消費税率10%への引上げ時の住宅にかかる経過措置

住宅にかかる消費税は、原則、引渡し日の税率が適用されますが、住宅等の請負工事には経過措置が講じられています。

具体的には、税率10%施行日の半年前(2019年3月31日)までの契約締結であれば、引渡し日に関わらず、契約時の税率8%が適用されます。

なお、分譲建売住宅については、※売買契約となりますので、原則引渡し日の税率が適用されます。

※建物の内外装や設備等のオプション部分を含む売買契約は、経過措置の対象となる場合もあります。

住宅取得支援策
長期優良住宅等を消費税率10%で取得した場合には、1戸あたり最大35万ポイントを付与する「次世代住宅ポイント制度」や、すまい給付金(消費税率8%のときは最大30万円、消費税率10%のときは最大50万円)の実施が予定されています。

 

事業用土地にかかる相続税法の見直し等

小規模宅地等の特例の見直し

相続税法の特例として、租税特別措置法69条の4で、一定の要件を満たす居住用や事業用(貸付を含む)の土地については、相続税評価額が80%(貸付の場合には50%)減額される小規模宅地等の特例が規定されています。

今回の改正では、この特例における小規模宅地等のうち、特定事業用宅地等について、次のように適用要件に除外規定が追加されることになる予定です。

特定事業用宅地等(400㎡まで80%減額)
<改正前>
・被相続人等の事業の用(貸付けを除く)に供されていた宅地等であること
・相続人等がその事業を引き継ぐこと
<改正後>(現行の適用要件に次の除外規定を追加)
相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等については除外します
その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合や、2019年3月31日以前から事業の用に供されている宅地等の場合には、たとえ相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等であっても、特定事業用宅地等として400㎡まで80%の減額評価することが可能です。 

 

個人の事業用資産にかかる相続税等の納税猶予制度の創設

個人事業者の円滑な世代交代を促進するため、事業用資産にかかる相続税と贈与税の納税猶予制度が創設されます。

認定相続人等2019年1月1日から2028年12月31日までの間に特定事業用資産不動産貸付事業等以外の事業用の土地・建物・減価償却資産)の相続等をした場合で一定の要件を満たすときには、その資産にかかる相続税等の全額が納税猶予されます。

つまり、昨年改正で創設された法人の事業承継税制の納税猶予の個人事業者版が創設されるということです。

特定事業用資産のうち、土地(400㎡迄)については、小規模宅地等の特例の特定事業用宅地等との選択適用となります。

土地登記の軽減税率や空き家譲渡の特例の延長

・土地の登記における次の登録免許税の軽減税率については、その適用期限が2021年3月31日まで延長されます。

土地の売買・・・所有権移転登記1.5%(本則2.0%)

 

・相続した空き家の譲渡所得3,000万円の特別控除の特例の要件が次のように緩和され、適用期限は2023年12月31日まで延長されます。

緩和された要件
① 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。

② 被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その家屋について、被相続人によって一定の使用がされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。

民法改正と相続税法改正

新設された「配偶者居住権」の相続税評価額

2018年7月13日に民法(相続関係)が改正されました。

配偶者居住権とは、相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、原則としてその配偶者が生きている間、その居住建物を無償で使用及び収益できる権利のことを言います。

配偶者居住権等の相続税評価額は次のように計算されます。

配偶者居住権の評価額
建物の時価ー建物の時価×(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数)×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の所有権の評価額
建物の時価ー配偶者居住権の評価額
配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利の評価額
土地等の時価ー土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
居住建物の敷地の所有権等の評価額
土地等の時価ー居住建物の敷地の利用に関する権利の評価額

 

税制改正の詳細はこちらをご覧ください。

平成31年度税制改正大綱について

 

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